万年筆のある暮らし。カスタム74を愛用する米田さんに聞いた、日常での使い方と楽しみ方

万年筆のある暮らし。カスタム74を愛用する米田さんに聞いた、日常での使い方と楽しみ方

1930年創業、大阪・高槻の文具専門店「文具クワウチ」。
私たちは、日々たくさんの文具や筆記具に触れながら、「書くこと」がもっと身近で、楽しくなるような提案をしています。そんな中で出会ったのが、約2年間、一本の万年筆を大切に使い続けている米田さんです。

万年筆を使ってみたいけれど、「どんなときに使えばいいの?」「普段使いできるの?」と感じている方も多いのではないでしょうか。

「いつか、お手紙を書くような暮らしをしてみたい」
そんな憧れから、人生で初めての万年筆を手にしたという米田さん。
愛用しているのは、パイロットの「カスタム74」のF(細字)。
万年筆を何本も使い分けるわけではなく、インクも今のところ黒一色です。

それでも、米田さんにとって万年筆は、日常の中でちょっと特別な存在になっています。
今回は、万年筆を使い始めたきっかけや普段の使い方、万年筆で文字を書くときに感じることについて、お話を伺いました。

1.「お手紙を書く暮らし」への憧れから、人生初の万年筆

米田さんが愛用しているパイロットカスタム74細字です。万年筆を使い始めたのは、今から約2年前。

きっかけを聞くと、米田さんは少し照れながら、「なんか、お手紙を書く暮らしに憧れて」と話してくれました。
それが、人生で初めて手にした万年筆。
選んだのは、パイロットの「カスタム74」。ペン先はF(細字)です。

たくさんの万年筆が並ぶ中で、初めての一本に選んだ理由は、 「初めての『万年筆』っていうイメージに、しっかりあるというか、やっぱり初めての万年筆は、定番のほうがいいかなと思って」とのこと。
黒軸のシンプルなデザインも含め、「万年筆」と聞いて思い浮かべるような、定番の一本を選びました。実際に使ってみると、F(細字)の細さもちょうどよく、「手に合う感じ」と、今も気に入って使っておられるそうです。

2.万年筆を使うのは、誰かに何かを届けるとき

普段、どんなときに万年筆を使うのでしょうか。
意外にも、長い手紙を書くためではありませんでした。

米田さんの暮らす地域には、おすそ分けをする文化があるそうです。

「ケーキを多めに焼いたから、どうぞ」

「果物があるから、よかったらどうぞ」

そんなふうに、住民同士で食べ物を分け合うことがあるのだとか。

取材では、実際に愛用されている万年筆でメモを書いていただきました。

取材では、実際に愛用されている万年筆でメモを書いていただきました。

そのときに、LINEなどで一言伝えるだけではなく、ちょっとした手書きのメモを添える。そのメモを書くときに、万年筆を使っているそうです。

「長文の手紙っていうよりも、そういうおすそ分けのときに。LINEで入れるより手書きメモを付けたいという想いがあって」とおっしゃっていました。

万年筆が活躍するのは、誰かに何かを渡すとき。
自分のためのメモではなく、相手に気持ちを届けるための文字を書くときに使う。それが、米田さんにとっての今の万年筆の使い方です。

3.万年筆を使うと、「丁寧な暮らしをしているな」と感じる瞬間

米田さんにとって、万年筆は「日常使いの筆記具」というより、少し特別な存在です。

「なんか、特別なときに使いたいみたいな。日常だと、なんかもったいないっていう気持ちが出てきちゃって」。

そのため、自分用のメモを書くときには、普段使っているボールペンを選ぶことが多いそうです。

一方で、誰かにメッセージを書くときには万年筆を手に取ります。

では、実際に万年筆で書くと、どんな気持ちになるのでしょうか。

その質問に、米田さんは笑いながら、 「すごく『丁寧な暮らしをしているな』っていう(笑)。満足感が高い」と答えてくれました。

少し良いものを使って、誰かにメモやメッセージを書く。それだけで、自分自身の満足度が高くなる。

万年筆には、文字を書く道具としての役割だけでなく、「書く時間そのものを楽しむ」という一面もあるのかもしれません。

そして、米田さんはもう一つ、万年筆で書いた文字そのものにも感じていることがあります。

「万年筆の字は、普通のボールペンの字とは、やっぱり違うじゃないですか。そこで相手も、普通のボールペンよりも、万年筆で書いたメッセージのほうが良いかなっていう感じはしています」

万年筆で書いた文字には、インクの濃淡や線の表情が生まれます。同じ黒いインクでも、筆圧やペン先から出るインクの量によって、文字の濃さにわずかな違いが出ることがあります。

そうした一文字一文字の表情も、万年筆で書く楽しさのひとつです。米田さんにとって万年筆は、ただ文字を書くための道具ではなく、手書きの文字に表情を添え、相手に思いを届けるための道具でもあるようです。

4.黒インクから、色や紙の楽しみにも興味が広がって

現在使っているインクは、カートリッジタイプの黒。

これまで、色のついたインクはほとんど使ったことがありません。

そんな米田さんに、今回は少し違った色のインクも試してもらいました。

黒でもブルーでもない、深い海のような色。「深海」という名前の色を見て、 「面白い。なんか楽しいですよね。そう、いろんな色があると」と興味を持ってくれました。

これまで黒一色だった米田さんにとって、インクの色を選ぶことも、万年筆の新しい楽しみ方のひとつになりそうです。

万年筆は、ペン本体だけでなく、インクを変えることで印象が変わります。

さらに、紙によっても色の見え方や書き心地は変わります。
米田さんは普段、万年筆で書くときには、少しツルッとした紙を選んでいるそうです。

「少しツルッとした紙に書くのが好きです」

インクの色、紙の質感、そしてペン先。組み合わせによって、同じ「書く」という行為でも、少しずつ表情が変わります。

実際に使ってみることで、こうした違いを知るのも万年筆の楽しさです。

米田さん自身も、今回のインタビューをきっかけに、 「もっと万年筆の日常の楽しみ方を知らないと、本当に大切な特別なときのペンみたいになっているから」と話してくれました。

これまで、米田さんにとって万年筆は「大切な特別なときのペン」でした。でも、色を変えたり、紙を変えたりしてみると、もう少し気軽に楽しめるのかもしれません。

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5.これからは、万年筆をもっと日常使いしてみたい

米田さんが普段よく使っているのは、就職祝いに友人からもらったボールペン。カチカチとノックして使える、使い慣れた一本です。

仕事ではパソコンを使うことが多く、手書きするときも黒のボールペンがあれば十分。そのため、これまでは万年筆を使う場面が自然と限られていました。

でも、今回お話を伺う中で、「もっと日常使いで、いろいろと色を変えたりして使ってみてもいいかもしれない」という気持ちが少し芽生えたようです。

万年筆は、特別な手紙を書くためだけのものではありません。

  • 誰かに渡すおすそ分けに添える一言。
  • ちょっとしたメッセージ。
  • お気に入りの紙に、好きな色のインクで書く短い言葉。

そんな小さな場面から、万年筆を日常使いしてみてもいいのかもしれません。

約2年間、一本の万年筆を大切に使ってきた米田さん。

「大切なものだから、特別なときに使いたい」という気持ちはそのままに、これからは少しずつ、日常の中でも使う場面が増えていくのかもしれません。

まずは、誰かに渡す小さなメモから。

お気に入りの一本で、いつもの「ありがとう」を書いてみる。そんなところから、万年筆のある暮らしを始めてみるのもよさそうです。

万年筆やインクを、もっと楽しみたい方へ

万年筆は、ペン先やインクの色によって書き心地や文字の表情が変わります。自分に合う一本や、お気に入りのインクを探してみませんか。

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店舗情報

執筆者:文具クワウチ 桑内 彩

大阪府高槻市高槻町15-24(JR高槻駅・阪急高槻市駅の間)

昭和5年創業。高槻センター街で文具専門店として、手書きの道具や紙を通じ「心を届ける時間」を提案しています。

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