「はじまりは、自分自身が欲しかったから。」文具クワウチ オリジナル革ペンケースができるまで。
お気に入りの筆記具を、どんな場所にしまっていますか?
前編では、文具クワウチのオリジナル革ペンケースを約1年半ご愛用くださっている新田さんに、実際の使い心地や、革の変化についてお話を伺いました。
今回は少し視点を変えて、このペンケースを企画した私自身が、「なぜ、このペンケースを作ろうと思ったのか」をお話します。
制作のきっかけは、とてもシンプルなものでした。
「本当に使いたいと思えるペンケースが欲しい。」
私自身の小さな想いから始まった開発。
文具店として長年、たくさんの筆記具に触れてきたからこそ見えてきたことや、大切な筆記具を守るための収納性。そして、使うほどに愛着が深まる素材へのこだわり。
一つのペンケースが形になるまでに込めた、私の想いをご紹介します。
目次
1.はじまりは、私自身が欲しかったから。
このペンケースはお客様の声から生まれた商品ではありません。
はじまりは、私自身が本当に欲しいと思えるペンケースがなかったことでした。
文具店を営んでいると、これまで本当にたくさんのペンケースを見てきました。
素材も、形も、収納できる本数もさまざま。機能的なものもあれば、デザインにこだわったものもあります。それでも、私自身が万年筆やお気に入りの筆記具を入れて持ち歩きたいと思えるものには、なかなか出会えませんでした。
「お気に入りの万年筆を入れたい。」
「机に置いた時にも美しいものがいい。」
「長く使えて、歳を重ねても持ち続けたい。」
そんなペンケースがあったらいいのに。
そう思ったことが、開発の始まりでした。

2.大切な筆記具には、それに見合う居場所を。
文具店で仕事をしていると、筆記具を大切にされている方にたくさん出会います。
お気に入りの万年筆を選ぶ方や書き心地のいいボールペンを選ぶ方。手帳やノートにもこだわる方。
文房具が好きな人ほど、道具そのものを大切にしている。
私は、そんな姿を日々見てきました。
だからこそ、ふと思ったのです。
大切な筆記具には、それに見合う「居場所」が必要ではないか。
ペンケースは単に筆記具を収納するためのものではありません。お気に入りの一本を傷つけずに持ち歩くためのもの。使いたいときに、気持ちよく取り出すためのもの。
そして、毎日使う道具だからこそ、手に取るたびに「これを選んでよかった。」と思えるものであってほしい。
そして、毎日使う道具だからこそ、手に取るたびに「これを選んでよかった。」と思えるものであってほしい。
このペンケースを企画したときに、そんなことを考えていました。
書道の世界には、筆・墨・硯・紙を「文房四宝」と呼ぶ考え方があります。
どれか一つだけにこだわるのではなく、それぞれの道具を大切に選び、組み合わせることで、書く時間そのものを豊かにしていく。
私は、この考え方は現代の筆記具にも通じるのではないかと思っています。
お気に入りの万年筆やボールペンを選び、手帳やノートにもこだわる。
そこに、毎日使うペンケースが加わる。
どんなに書き心地の良い筆記具でも、傷つくことを気にしながら持ち歩いたり、収納する場所に満足できなかったりすると、その魅力を十分に楽しむことはできません。
だからこそ、上質な筆記具と自然になじみ、使うほどに愛着が深まり、長く大切に使っていただけるペンケースを目指しました。
筆記具を選ぶように、ペンケースも選ぶ。
「大切な道具に、大切な居場所を。」そんな想いから、このペンケースは生まれました。

内側を裏張りせず、革をむき出しにした仕様では、使ううちに汚れが目立ちやすくなります。そこで、お気に入りのペンを傷つけないよう、内側までレザーで仕立てたフルレザー仕様にしました。丈夫で汚れも目立ちにくく、長くきれいにお使いいただけるペンケースです。
3.文具店だからこそ、できること。
このペンケースを作るうえで、特に大切にしたのが、「大切な筆記具を守る収納性」でした。
万年筆には、細身のものもあれば太軸のものもあります。
ボールペンやシャープペンシルも、それぞれ形や大きさが違います。
長年、さまざまな筆記具を扱ってきたからこそ、筆記具には一つひとつ個性があることを知っています。
だから、「とにかくたくさん入ればいい」という考え方ではなく、大切な筆記具を、きちんと守りながら収納できること。そこを大切にして設計しました。

内側に大切なペンを設計するためのポケットを付けています。斜めにカットすることで取り出しやすい仕様にしています。
さらに、コンパクトさとフォルムの美しさにもこだわりました。
お気に入りの筆記具をしっかり収納しながらも、片手で持てるほどコンパクトに。バッグの中でかさばらず、スーツのポケットにも無理なく収まり、必要な時にはさっと取り出せるサイズ感を目指しました。
また、ペンケースは持ち歩くときだけでなく、デスクの上に置いて使うものでもあります。仕事のデスクに置いたときにはビジネスシーンになじみ、自宅やカフェで使うときにはプライベートの空間にも自然と馴染む。そんな、置いたときのフォルムの美しさも大切にしました。

ただ、私たちは革製品の専門店ではありません。
革のことについては、やはり専門家の知識が必要です。
そこで、京都・醍醐で革について深い知識と経験を持つ革の専門店、権治の奥野さんに相談しました。
革の種類や厚み、使い込んだ時の変化、仕立て方などについてアドバイスをいただきながら、私たちが想い描いていたペンケースについて相談を重ねました。

「筆記具を大切に収納したい」という私たちの考え方をお伝えすると、革の専門家ならではの視点から、素材や仕立てについて様々なご提案をしていただきました。
自分たちだけでは気づかなかったことを教えていただき、試作を重ねながら少しずつ形を整えていきました。
文具店として長年培ってきた筆記具への知識と、革の専門家からいただいた素材や仕立てへの助言。
それぞれの視点を重ねることで、単に「革で作ったペンケース」ではなく、大切な筆記具を安心して持ち歩き、長く使えるものを目指しました。
使う人にとって、筆記具をしまう時間さえ心地よく感じられること。
そして年月を重ねるほどに愛着が深まっていくこと。
そんなペンケースを、文具店として形にしたいと考えました。

▲ペンケースの収納部分・内部構造・筆記具を収納している様子
4.使うほどに育つ、素材へのこだわり
もうひとつ、私がこだわった」のが素材です。
最初から「新品のときに一番きれいなもの」を作りたいとは思っていませんでした。
むしろ、使い続けることで、どんどん好きになっていくものにしたかった。
そこで選んだのが、経年変化を楽しめる革でした。

革は、使う人の手に触れ、毎日持ち歩くことで、少しずつ色や艶が変わってきます。
同じ革でも、使う人によって育ち方は違います。
傷も、艶も、色の変化も、その人が過ごしてきた時間の一部になる。
私はそこに革製品ならではの魅力を感じています。
新品の状態が完成ではなく、使い始めたところから、その人だけのペンケースが始まる。
そんな素材を選びたいと思いました。

前編でご紹介した新田さんのペンケースも、約1年半使っていただく中で、革に自然な艶が生まれていました。

▲新田さんが1年半ご使用いただいているペンケース(ダークブラウン)とボールペン「タイムライン」PAST ダークブラウン
「最初より、すごくスムーズに入るようになった」とお話されていたように、使うほどに革が持ち主や筆記具になじんでいく。
その変化を一緒に楽しんでいただけることは、作り手としても、とても嬉しいことです。
▲左が新品、右が1年半使い込んだペンケースです。5.長く使うことを楽しんでほしい。
私は文具店を続けてきた中で、何年も、何十年も大切に使われている筆記具をたくさん見てきました。
「これは昔から使っているんです。」
そう言って、お客様が大切な万年筆を見せてくださることがあります。
そのたびに、道具には「モノ」以上のものが宿るのだと感じます。
買ったときの思い出や、その筆記具を使って過ごした時間。仕事で頑張った日や誰かから贈られた日のこと。
そうした時間が積み重なって、一本の筆記具が自分にとって特別な存在になっていく。
だからこそ、その大切な筆記具を入れるペンケースも、できるだけ長く使ってほしい。
だからこそ、その大切な筆記具を入れるペンケースも、できるだけ長く使ってほしい。
流行りに合わせて買い替えるものではなく、歳月を重ねながら使い続けられるものにしたい。
そう考えました。
そう考えました。
使うほどに革の表情が変わり手に馴染んでいく。
傷や艶も、その人だけの歴史になっていく。
そんな変化を楽しみながら、筆記具と一緒に長く使っていただけたらと思っています。

「大切な一本」に、それに見合う居場所を。
「私がこんなペンケースを使いたい。」その小さな想いから、このペンケースは始まりました。
そして今、実際に使ってくださる方が増え、大切な一本と一緒に時間を重ねている姿を見ると、作ってよかったと心から思います。
お気に入りの筆記具を持ち歩くこと。
デスクに置いて、使うたびに手に取ること。
革の表情が少しずつ変わり、自分だけの道具になっていくこと。
そんな何気ない時間も、道具を大切にする楽しさのひとつなのだと思います。
これから何年も使い続ける中で、革の艶が増し、手になじんでいく。
その隣には、きっとお気に入りの一本がある。
そんなふうに、筆記具とともに時間を重ねていただけたら嬉しく思います。
あなたの「大切な一本」に見合う居場所を。
それが、このペンケースを作った私の想いです。
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【店舗情報】
執筆者:文具クワウチ 桑内 彩
(大阪府高槻市田厚樹朝15-24/JR高槻駅・阪急高槻市駅の間)
昭和5年創業。高槻センター街で文具専門店として、手書きの道具や紙を通じて「心を届ける時間」を提案しています。